「LGBTQ+を卒論のテーマにしたいが、どう扱えばよいか分からない」「センシティブなテーマなので研究方法に悩む」「日本の制度動向と学術的な理論枠組みを整理したい」——こうした相談が近年増加している。同性パートナーシップ制度の全国的な広がり、同性婚訴訟の各地方裁判所判決、性的マイノリティに関する社会的関心の高まりを背景に、LGBTQ+関連の卒論テーマ設定を検討する学生が急増しているためである。しかし卒論特化で、テーマ設定・理論枠組み・研究倫理・分野別アプローチを統合した記事は業界に少ない。
本記事では、累計6,000件超の卒業論文・レポート添削を手がけてきたレポートビズ編集部の視点から、用語の使い分け、日本のLGBT関連制度の変遷5期、学問分野別アプローチ7分類、理論枠組み5選、研究テーマ30選、情報源7分類、研究方法5選、研究倫理の配慮、避けるべきテーマ5選、教員受けの良いテーマの特徴、卒論構成例までを体系的に整理する。センシティブなテーマゆえに、当事者への敬意と学術的誠実さを最優先に構成した。
本記事のスタンスを最初に明確にしておきたい。本記事は「LGBTQ+の人々を研究する」ためのマニュアルではなく、「LGBTQ+をめぐる社会的・法的・文化的現象を分析する」ための実務ガイドである。この違いは決定的である。前者は当事者を客体化する視点であり、後者は社会現象そのものを分析対象とする視点である。卒論のテーマ設定においても、この視点の違いが学術性・倫理性を大きく左右する。本記事を通して、当事者性への敬意と学術的な理論・データに基づく分析——この両方を両立させる姿勢を貫いてほしい。
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卒論のLGBTQ+研究|結論と全体像
結論から述べる。LGBTQ+は卒論のテーマとして極めて意義深い研究対象である。社会学・法学・心理学・教育学・メディア論など多くの学問分野からアプローチでき、日本の制度変化・社会意識の変容という現在進行形のダイナミズムを扱える。特にパートナーシップ制度の全国拡大と同性婚訴訟の進展という近年の変化は、研究テーマとして新規性を打ち出しやすい領域である。
ただし、センシティブなテーマゆえに、いくつかの重要な配慮が必要である。第一に、用語の正確な使い分け。「LGBT」「LGBTQ+」「SOGI」「クィア」はそれぞれ意味と歴史的背景が異なる。第二に、当事者を「対象化」せず、対等な視点で扱うこと。第三に、大学の研究倫理審査への申請が必要な場合が多いこと。第四に、既存の理論枠組み(クィア理論、SOGI概念など)への基本的な理解が前提となること。これらを踏まえた上でこそ、LGBTQ+研究は学術的に成立する。
本記事は、用語の理解、制度変遷、学問分野、理論枠組み、テーマ30選、研究倫理、避けるべきテーマまでを段階的に提示する。文系学生を主な対象とするが、経営学・情報工学系のアプローチにも触れる。研究倫理の項目は特に重要なため、テーマ選定前に必ず確認してほしい。
用語の使い分けガイド|LGBT/LGBTQ+/SOGI/クィア
研究を始める前に、基本用語の意味と使い分けを理解する必要がある。用語の選択は卒論の姿勢を示すシグナルとなる。
LGBT|レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシュアル(B)、トランスジェンダー(T)の頭文字。1990年代から普及した用語だが、この4つに収まらない性的マイノリティを包含しにくい。
LGBTQ+|上記にクィア/クエスチョニング(Q)、その他の多様な性のあり方(+)を含む拡張表記。現代の学術研究・報道でよく使われる。
SOGI|Sexual Orientation and Gender Identity(性的指向・性自認)の略。「マイノリティ」を指す用語ではなく、すべての人が持つ属性として位置づける概念。国連・人権関連の議論で用いられる。
クィア|元は差別語だったが、当事者が自ら再定義した用語。学術的にはクィア理論として発展し、規範化された性・ジェンダーの解体を志向する立場を示す。
SOGIESC|Sexual Orientation, Gender Identity and Expression, and Sex Characteristics。より包括的な概念で、性表現と身体の性的特徴も含む。
卒論では、扱う対象・分野に応じて用語を使い分ける。当事者の運動史を扱うならLGBT、包括的視点ならLGBTQ+、政策・人権議論ならSOGI、学術理論を扱うならクィア、といった具合である。用語の選択理由を序論で明示すると、卒論の姿勢が明確になる。
日本のLGBT関連制度|変遷5期
日本におけるLGBT関連制度・社会意識の変遷を5期に区分する。時代区分を意識することで、自分の卒論が扱う時代の位置づけが明確になる。
第1期|1990年代 「見えない」時代
性的マイノリティの存在が社会でほとんど可視化されていなかった時代。1994年に日本初のプライドパレード(東京レズビアン&ゲイパレード)が開催。当事者運動の萌芽期。
第2期|2000年代 制度整備の萌芽
2004年に「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」施行。トランスジェンダー当事者の戸籍上の性別変更が可能に(ただし要件が厳しい)。メディアでの当事者の登場も増加。
第3期|パートナーシップ制度導入期(2015〜2018年頃)
2015年に東京都渋谷区・世田谷区が日本初の同性パートナーシップ証明制度を導入。以降、全国の自治体で類似制度が広がる。「LGBT」という言葉のメディア露出が急増し、企業の取り組みも本格化。
第4期|全国拡大期(2019〜2022年頃)
パートナーシップ制度が全国の主要都市に拡大。同性婚訴訟が全国の地方裁判所で開始。2021年札幌地裁判決で「同性婚を認めない民法規定は違憲状態」との判断。企業のダイバーシティ&インクルージョン施策の本格化。
第5期|LGBT理解増進法以降(2023年〜現在)
2023年6月にLGBT理解増進法成立。各地の地裁・高裁で同性婚訴訟判決が続き、複数の判決で違憲判断。パートナーシップ制度は自治体人口カバー率80%超に。学校教育・企業研修の整備も進む一方、バックラッシュも顕在化。この時期の変化は卒論テーマとして最も新規性を打ち出しやすい。
5期区分を使えば、自分の卒論が「どの時代の何を扱うか」を明確にできる。特に第5期(理解増進法以降)は最新の変化であり、先行研究が少ない分だけ独自性を出しやすい。
学問分野別アプローチ|7分類
LGBTQ+研究を扱える学問分野を7つに整理する。同じテーマでも分野が違えば問いの立て方が変わる。
①社会学|カミングアウト、コミュニティ、家族、労働、社会運動、若者研究など。最も研究蓄積が多い。
②法学|同性婚訴訟、パートナーシップ制度、性別変更法、雇用差別禁止、国際比較。判例研究が中心。
③心理学|カミングアウトの心理過程、マイノリティストレス、精神的健康、支援方法。
④教育学|学校でのLGBTQ+対応、いじめ、教員研修、包括的性教育、当事者児童・生徒の支援。
⑤メディア論|メディアでの表象、LGBTQ+テーマのドラマ・映画分析、SNSでの発信、報道分析。
⑥歴史学|日本のLGBT運動史、戦後の性的マイノリティ、江戸期の男色文化などの歴史研究。
⑦経営学|企業のダイバーシティ&インクルージョン、LGBTQ+フレンドリー施策の経営効果、当事者社員の労働環境。
自分の所属学部と、関心のあるLGBTQ+関連現象を掛け合わせて、どの分野からアプローチするかを決める。1つの現象を複数分野で扱うこともできるが、卒論では1つの分野を軸に据えるのが基本である。
研究の理論枠組み|5選
LGBTQ+研究で使われる主要な理論枠組みを5つ整理する。理論枠組みの選択が、卒論の学術的深さを決める。
①クィア理論|1990年代にジュディス・バトラーらが体系化。性・ジェンダー・セクシュアリティを本質的なものではなく、社会的に構築されたものとして分析する。規範化された二元論の解体を志向。
②ジェンダー・パフォーマティビティ論|バトラーの中心的概念。ジェンダーは反復的な行為の実践によって構築されるという視点。日常の行動・表象分析に有効。
③インターセクショナリティ|K.クレンショーが提唱。人種・階級・ジェンダー・セクシュアリティなど複数の属性が交差して差別を形成するという視点。ゲイ男性でも人種差別に晒されるといった重層的な分析が可能。
④カミングアウト論|自身の性的指向・性自認を他者に開示する過程の心理的・社会的分析。V.カースの発達モデル、A.カーンほかの理論など。
⑤SOGI視点(人権枠組み)|性的指向と性自認をすべての人が持つ属性として位置づけ、差別禁止の法的枠組みを構築する視点。国連人権理事会、国際法の議論に基づく。
5枠組みは分野・テーマによって使い分ける。社会学系ではクィア理論・パフォーマティビティ、法学系ではSOGI視点、心理学系ではカミングアウト論が親和的である。理論枠組みなしの「LGBTQ+について書きました」では、学術的な卒論にならないため、必ず理論を軸に据える。
卒論のLGBTQ+研究テーマ|30選
学問分野別に、卒論で扱えるLGBTQ+研究テーマを30個提示する。自分の関心に合うものをベースに、テーマを絞り込んでいく。
社会学系|5テーマ
①同性パートナーシップ制度導入後の当事者の生活変化
②LGBTQ+若者のカミングアウトの現代的様相——SNS時代の変容
③日本の性的マイノリティコミュニティの地域差——都市と地方の比較
④トランスジェンダー当事者の就労実態
⑤同性カップルの家族形成——養子・生殖補助医療の利用
法学系|5テーマ
⑥同性婚訴訟の各地裁判決の比較分析
⑦パートナーシップ制度の法的限界と課題
⑧性同一性障害特例法の要件見直しをめぐる法的議論
⑨LGBT理解増進法の意義と限界
⑩国際比較——日本・韓国・台湾のLGBTQ+関連法制度
心理学系|4テーマ
⑪LGBTQ+当事者のマイノリティストレス研究
⑫カミングアウトが心理的健康に与える影響
⑬LGBTQ+若者の自己受容過程
⑭家族のカミングアウト受容過程の分析
教育学系|5テーマ
⑮学校におけるLGBTQ+対応の現状——教員意識調査
⑯包括的性教育とLGBTQ+の扱い
⑰LGBTQ+当事者の学校いじめ経験
⑱大学生のLGBTQ+理解の実態
⑲多様な性を扱う教材開発の可能性
メディア論系|4テーマ
⑳日本のドラマにおけるLGBTQ+表象の変遷
㉑韓国BLコンテンツの日本受容——現代若者のセクシュアリティ観
㉒SNS上のLGBTQ+当事者の自己表現
㉓報道のLGBTQ+関連用語の使用実態分析
歴史学系|4テーマ
㉔戦後日本のゲイコミュニティの形成史
㉕日本のトランスジェンダー当事者運動史
㉖江戸期の男色文化と近代化
㉗日本のLGBT運動の系譜——1990年代から現在まで
経営学系|3テーマ
㉘企業のダイバーシティ&インクルージョン施策の実態と効果
㉙LGBTQ+フレンドリー企業の採用戦略
㉚LGBTQ+当事者社員のキャリア支援の実際
30テーマから自分の関心に近いものを選び、指導教員と相談しながら絞り込んでいく。テーマは「対象+時代+切り口」の3要素で構成すると範囲が明確になる。例えば①は「同性パートナーシップ制度(対象)+導入後(時代)+当事者の生活変化(切り口)」となる。
使える情報源|7分類
LGBTQ+研究で活用できる情報源を7分類で整理する。信頼できる情報源の見極めが特に重要な領域である。
①学術論文DB|CiNii、J-STAGE、Google Scholarで「LGBT」「LGBTQ」「同性愛」「性的マイノリティ」「クィア」などのキーワードで検索。海外はJSTOR、GLQ (Journal of LGBTQ Studies)。
②学会誌|日本女性学会、日本ジェンダー学会、日本社会学会、家族社会学会などの学会誌に多数の研究が掲載。
③政府・自治体資料|内閣府「性的マイノリティに関する意識調査」、各自治体のパートナーシップ制度資料、法務省の判例情報。
④当事者団体・NPO資料|認定NPO法人虹色ダイバーシティ、ReBit、NPO法人東京レインボープライドなどの調査報告、活動記録。
⑤海外文献|Journal of Homosexuality、GLQ、Sexualitiesなどの学術誌。国連人権理事会の報告書。
⑥判例・法令データベース|裁判所ウェブサイト、LEX/DBインターネット、Westlaw Japan。同性婚訴訟の判決文が入手可能。
⑦インタビュー・アンケート|当事者や支援団体、教育・行政関係者への聞き取り。研究倫理審査を必ず経る。
①〜⑥は2次資料、⑦は1次資料である。特にこの領域は当事者団体が信頼できる調査データを公開しており、④の活用が卒論の質を左右する。個人ブログ・SNS投稿の引用は、当事者性が明確でも学術的信頼性に注意して扱う。
研究方法|5選
LGBTQ+研究で使える主な研究方法を5つ整理する。テーマの性質と倫理的配慮を踏まえて選ぶ。
①質的インタビュー|当事者や関係者への半構造化インタビュー。研究倫理審査必須。プライバシー保護、匿名化、逐語録の取り扱いに厳格な配慮が必要。
②参与観察|イベント、コミュニティスペースへの参加観察。ただし当事者の自主的な集まりへの介入には慎重さが必要。
③文献分析|判例、政策文書、報道、当事者の自伝的著作の分析。倫理的リスクが比較的低い方法。
④量的調査|アンケート調査。SNS等でサンプルを募る。センシティブな質問項目の設計に配慮が必要。
⑤参加型研究|当事者と共同で研究デザインを設計する参加型アクションリサーチ。当事者を「対象化」しない優れた方法だが、高度な準備が必要。
方法の選択は倫理配慮と密接に関係する。初学者には③(文献分析)が最も取り組みやすく、リスクも低い。①②④を行う場合は必ず指導教員と大学の研究倫理審査委員会に相談する。
研究倫理の配慮|必須の5項目
LGBTQ+研究では、他分野以上に研究倫理への配慮が必要である。以下の5項目は必ず遵守する。
①研究倫理審査|人を対象とする研究(インタビュー・アンケート)は、大学の研究倫理審査委員会への申請が必要。多くの大学で必須。
②インフォームド・コンセント|研究の目的・方法・データの取り扱いを明示し、書面での同意を得る。途中で協力を撤回できる権利も明示。
③匿名化の徹底|個人が特定される情報は完全に匿名化する。名前だけでなく、所属・職業・地域なども特定につながる場合は加工する。
④カミングアウト状況の保護|当事者のカミングアウト状況(いつ・誰に開示しているか)は極めてセンシティブな情報。研究協力によって意図せずアウティングにつながらないよう配慮。
⑤対象化の回避|当事者を「研究対象」ではなく「研究協力者」として位置づける。当事者の視点・経験を尊重し、研究者の枠組みに一方的に当てはめない。
これらの倫理配慮を怠ると、卒論の学術的評価が下がるだけでなく、研究協力者に実害を及ぼす可能性がある。「センシティブなテーマだからこそ、より高い倫理基準が求められる」ことを常に意識する。指導教員と大学の研究倫理審査委員会との連携が不可欠である。
特に④のカミングアウト状況の保護は、他分野の研究では想定されない特有の配慮点である。当事者が家族・職場・学校で開示している範囲は個々人で異なり、卒論の論文発表や口頭試問で意図せず情報が漏れると、研究協力者が予期しないアウティングに直面する可能性がある。インタビューデータの保管、逐語録の共有範囲、卒論本文への引用、大学リポジトリでの公開範囲まで、細部にわたる配慮設計が必要である。研究倫理審査委員会への申請時に、この点への配慮を明示的に記述することを強く推奨する。倫理配慮の充実は、卒論の学術的価値を高める要素でもある。
避けるべきLGBTQ+テーマ|5選
LGBTQ+研究で避けるべきテーマパターンを5つ提示する。これらは学術的にも倫理的にも問題を生じさせる。
NG①|当事者を客体化するテーマ|「LGBTの人はなぜ生まれるのか」など、当事者を「異質な他者」として位置づけるテーマ。当事者の主体性を無視している。
NG②|センセーショナルな扱い|「LGBTの性的行動の実態」など、興味本位で当事者のプライバシーに踏み込むテーマ。研究倫理審査でも承認されない可能性が高い。
NG③|治療対象視するテーマ|LGBTQ+を「病気」「治すべき状態」として扱うテーマ。1990年代以降、国際的にLGBTQ+は病理ではないという合意がある。
NG④|LGBTQ+を過度に単一の集団として扱う|「LGBTの人は◯◯である」など、多様な性のあり方を一括りにする議論。インターセクショナリティの視点が欠如。
NG⑤|理論なし・データなしの一般論|「LGBTQ+について理解すべきである」といった主張だけで、理論枠組みも一次資料もない卒論。学術性を欠く。
これら5パターンは、指導教員から必ず修正を求められる。テーマ設定時に自分の問いがこれらに該当していないかを確認する。当事者性への敬意と、学術的な理論・データに基づく分析——この2つを両立させることが、LGBTQ+研究の卒論では特に重要である。
教員に受けの良い|LGBTQ+テーマの特徴
指導教員・審査員から高評価を得やすいLGBTQ+テーマの特徴を5つ整理する。テーマ設定時にこれらを意識すると、承認されやすい。
特徴①|理論枠組みが明確|クィア理論、SOGI視点、インターセクショナリティなど、既存の理論を援用して分析する。
特徴②|一次資料に基づく|判例、政策文書、当事者団体の調査データ、質的インタビューなど、独自の分析対象を持つ。
特徴③|時代性・新規性|パートナーシップ制度、同性婚訴訟、LGBT理解増進法など、最新の社会変化を扱う。
特徴④|対象が絞られている|「日本のLGBTQ+全般」ではなく「◯◯自治体のパートナーシップ制度」「トランスジェンダー当事者の就労」など具体的な対象。
特徴⑤|研究倫理が配慮されている|研究倫理審査を経ている、匿名化が徹底されている、当事者の主体性を尊重している、といった配慮が卒論本文に反映されている。
これら5特徴を満たすテーマの例として、「LGBT理解増進法成立後の◯◯自治体におけるパートナーシップ制度運用の実態——利用者インタビューをもとに」といったテーマが挙げられる。理論・一次資料・時代性・対象絞り込み・倫理配慮の5要素を満たしている。
LGBTQ+テーマの卒論構成例
LGBTQ+研究の卒論構成の一例を提示する。分野・テーマによって異なるが、標準的な骨格として参考にできる。
序論(10〜15%)|研究背景(近年の制度変化・社会意識)、問題提起、研究目的、意義、用語の選択理由、本論文の構成。
第1章 先行研究レビュー(15〜20%)|日本・海外のLGBTQ+研究の整理、リサーチギャップの特定。
第2章 理論枠組みと方法(10〜15%)|クィア理論等の枠組み提示、研究方法の説明、研究倫理への配慮の明記。
第3章 調査結果・分析(30〜40%)|インタビュー、判例分析、統計分析、政策文書分析などの結果。図表を活用しつつ匿名性を保つ。
第4章 考察(15〜20%)|分析結果の解釈、先行研究との比較、理論的示唆、現代日本社会への含意。
結論(5〜10%)|研究成果の要約、意義、限界、今後の課題。
この構成は標準例であり、テーマや分野の慣行に合わせて調整する。特に第2章の研究倫理への言及は、LGBTQ+研究では必須と考えてよい。
それでも判断に迷う場合の選択肢
LGBTQ+研究のテーマ設定で判断に迷う場合の選択肢を3つ提示する。
①指導教員に相談|30選から絞り込んだ3案を持って指導教員と面談し、実現可能性・倫理的妥当性を確認する。
②大学の研究倫理審査委員会に相談|人を対象とする研究の場合、早めに研究倫理審査委員会に相談する。手続きに時間がかかる場合がある。
③第三者の添削でチェック|テーマ案の学術性・新規性・倫理配慮を第三者にチェックしてもらう。レポートビズでは、累計6,000件超の指導実績をもとに、参考資料としての卒論のテーマ設定・構造チェックを提供している。公式LINEには1,700名超が登録しており、24時間相談を受け付けている。
よくある質問|FAQ
Q1|自分は当事者ではないですが、LGBTQ+をテーマにしてよいですか
問題ない。むしろ多くのLGBTQ+研究者は非当事者である。ただし当事者への敬意、対象化しない視点、研究倫理への配慮が必要である。当事者性の有無を序論で明示することもある。
Q2|自分が当事者であることを卒論で明示すべきですか
明示するかどうかは自分で判断する。当事者性を明示することで研究の視点を強化できる一方、指導教員以外に開示したくない場合は伏せてよい。自身の安全と学術的な要請のバランスで決める。
Q3|LGBTQ+当事者へのインタビューは実施が難しいですか
実施可能だが、大学の研究倫理審査、当事者団体を通じた協力者募集、匿名化の徹底など、多くの準備が必要。難しい場合は文献分析(判例、政策、報道など)に方法を切り替えるのも一つの選択。
Q4|使う用語は「LGBT」と「LGBTQ+」どちらがよいですか
扱う対象と時代による。近年の研究では包括性の高いLGBTQ+が推奨される。1990〜2000年代の運動史を扱うなら当時の呼称「LGBT」で構わない。序論で用語選択の理由を明示する。
Q5|LGBTQ+関連法の判例を扱う場合の注意点は
判決文の原文を必ず確認する。地方裁判所判決と高等裁判所判決、最高裁判所判決の位置づけを正確に整理する。同性婚訴訟は複数の地裁で異なる判決が出ているため、比較分析の視点が有効。
Q6|海外との比較研究は難しいですか
難しいが可能。台湾(2019年アジア初の同性婚合法化)、韓国(制度整備は遅れているが社会運動が活発)、欧米諸国など、日本と比較しやすい対象がある。文献ベースなら実施可能で、独自性を出しやすい。
Q7|LGBTQ+研究にAIは活用できますか
できるが、当事者の個人情報は絶対にAIに入力しない。判例分析、先行研究整理、論点整理などの非個人情報の処理に限って使う。詳細は本サイトのAI活用系記事を参照。
まとめ|敬意と学術的誠実さの両立を
本記事では、卒論のLGBTQ+研究について、用語の使い分け、日本のLGBT関連制度の変遷5期、学問分野別アプローチ7分類、理論枠組み5選、研究テーマ30選、情報源7分類、研究方法5選、研究倫理の配慮、避けるべきテーマ5選、教員受けの良いテーマの特徴、卒論構成例、FAQまでを体系的に整理してきた。
LGBTQ+は現在進行形の社会変化を伴う極めて重要な研究領域である。パートナーシップ制度の全国拡大、同性婚訴訟、LGBT理解増進法など、卒論として取り組む価値のある論点が数多くある。ただしセンシティブなテーマゆえに、他分野以上に配慮すべき事項も多い。当事者への敬意、対象化しない視点、研究倫理審査、匿名化の徹底、理論枠組みへの立脚——これらすべてを守ることで、初めて学術的にも倫理的にも成立する卒論となる。この2つの両立こそが、LGBTQ+研究の卒論の最大の意義である。
本記事のポイントを整理すると、以下の3点に集約される。第一に、LGBTQ+研究は7つの学問分野からアプローチでき、5つの理論枠組みで30のテーマ候補がある。第二に、他分野以上に研究倫理への配慮(研究倫理審査/匿名化/対象化の回避/カミングアウト状況の保護)が必須である。第三に、避けるべきテーマ(当事者を客体化するもの、センセーショナルな扱いなど)を認識した上で、教員受けの良いテーマ5特徴(理論枠組み/一次資料/時代性/対象絞り込み/倫理配慮)を意識してテーマを設計する。この3点を押さえれば、社会的意義の高い卒論が完成する。
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