最終更新日:2026年8月12日
この記事でわかること
- 卒論での財務分析の意義と、経営学・会計学系卒論での位置づけ
- 分析対象企業の選び方(データ入手可能性・比較容易性・研究意義の3視点)
- 財務データの入手方法(EDINET・有価証券報告書・企業IR)
- 4カテゴリの主要指標(収益性・安全性・効率性・成長性)と代表指標
- 時系列分析と同業他社比較の設計
- 分析結果を卒論本文にどう組み込むか
- よくある卒論財務分析の5つの失敗パターン
執筆:レポートビズ編集部
2021年5月の開業以来、累計6,000件超のレポート・卒論作成の依頼に対応してきた編集チームが、卒論での財務分析を業界内部の視点で体系的にまとめている。対象企業の選定・データ入手・指標選択・比較設計・本文への組み込みまで、経営学系卒論向けの実践ガイドとして構築した。
「卒論で財務分析をやりたいが、何から始めればよいか」「どの指標を使えばよいか分からない」——このキーワードで検索する人は、経営学・会計学系の卒論に取り組む大学4年生である。
結論から言えば、卒論の財務分析は「対象企業の選定→データ入手→指標選択→比較分析→本文への組み込み」の5段階で進める。4カテゴリの指標(収益性・安全性・効率性・成長性)を体系的に扱い、時系列と同業他社比較を組み合わせることで、説得力のある分析が構築できる。
上位の記事の多くは実務者向けの一般論であり、卒論に特化した進め方は限られている。本記事では、対象企業の選び方、EDINET等のデータ入手、4カテゴリの指標、比較分析の設計、本文への組み込みまで、卒論用の財務分析ガイドを整理する。
財務分析は、経営学・会計学・商学系の卒論で最も評価される分析手法の1つである。数字と論理で構築される議論は、教員からの評価も高い。時間はかかるが、正しく実施すれば卒論の質を大きく高めることができる。
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卒論での財務分析の意義
結論:財務分析は、経営学・会計学系の卒論で「客観的な根拠に基づく議論」を可能にする最も強力な手法である。公開データを使うため信頼性が高く、独自の分析視点で卒論の独自性も打ち出せる。
まずは財務分析の意義を、卒論全体の中で理解したい。この認識が、以降の実務での姿勢を決める。
客観的な根拠を提供する
財務分析は、企業の業績や状態を数値で客観化する。感想や印象ではなく、データに基づく議論を可能にする。
「A社は成長している」という主張を、財務分析なら「A社の売上高成長率は過去3年で年平均12%であり、業界平均5%を大きく上回る」と定量的に示せる。この客観性が卒論の説得力を担保する。詳細は卒論のデータ活用もあわせて参照してほしい。
教員は特に「数字で語れる卒論」を高く評価する傾向がある。定性的な議論だけの卒論と、財務データで裏付けられた卒論では、評価が2〜3ランク変わることも珍しくない。数字の力を活用する姿勢が、卒論の質を大きく高める。
公開データで実施できる
上場企業の財務データは、有価証券報告書として公開されている。特別なコネクションや高額なデータ購入なしに、質の高い分析が可能である。
EDINETで無料でダウンロードできる。この手軽さが、卒論での財務分析の大きな利点である。時間さえかければ、誰でも実施できる分析手法となる。
独自の分析視点で差別化できる
同じ企業のデータを使っても、分析の切り口・比較対象・注目指標の選び方で、卒論の独自性が生まれる。
「A社を分析する」は誰でもできるが、「A社を業界内の異色企業と比較する」「A社の海外展開と収益性の関係を見る」といった切り口で、独自の視点を打ち出せる。
独自の切り口を打ち出すには、対象企業の特徴的なイベント(M&A・新規事業・海外進出等)と財務指標の変化を紐づけて分析するアプローチが有効である。「〇年の新事業立ち上げが、以降のROAにどう影響したか」といった切り口で、独自性の高い分析が構築できる。
分析対象企業の選び方
結論:分析対象企業は「データ入手可能性」「比較容易性」「研究意義」の3視点で選ぶ。この3つを満たす企業を選ぶことで、卒論全体の実施可能性と価値が担保される。
対象企業選びが、卒論の成否の8割を決める。選び方の視点を整理する。
視点1:データ入手可能性
上場企業を選ぶ。非上場企業は財務データが公開されていないため、卒論での分析は困難である。
東証プライム市場・スタンダード市場・グロース市場に上場する企業は、有価証券報告書をEDINETで公開している。過去5〜10年分のデータを揃えられる企業が理想である。
最近上場したばかりの企業は、過去データが少ないため分析が困難である。少なくとも上場して5年以上経過している企業を選ぶと、時系列分析に必要なデータが揃いやすい。
視点2:比較容易性
同業他社との比較がしやすい企業を選ぶ。業界内に複数の上場企業がある業界の主要企業が扱いやすい。
小売業・製造業・サービス業などは、比較対象が豊富で分析しやすい。逆に、業界内に上場企業が1〜2社しかない業界では、比較分析が困難となる。
視点3:研究意義
その企業を分析する学術的・実務的な意義があるかを検討する。単に有名だから、興味があるから、では不十分である。
「なぜこの企業を分析するか」を明確に説明できる企業を選びたい。業界の代表的存在、独自の戦略、急成長・急衰退、といった特徴がある企業は、研究意義を打ち出しやすい。
教員に企業選定の理由を説明する時、「有名だから」「よく使うから」では通用しない。「業界内で特徴的な戦略を取っている」「業界平均を大きく上回る/下回る業績」といった、学術的に興味深い特性を持つ企業を選ぶ姿勢が求められる。
財務データの入手方法
結論:財務データは「EDINET」「企業IRサイト」「業界データベース」の3つのソースから入手できる。EDINETが基本、IRサイトで補足、業界データベースで比較データを揃える。
データ入手の効率が、分析全体の進捗を左右する。3つのソースを整理する。
EDINET(金融庁)
EDINETは、金融庁が運営する電子開示システムである。上場企業の有価証券報告書を無料でダウンロードできる。
企業名で検索すれば、過去の報告書が一覧で表示される。PDFまたはXBRL形式で入手可能である。財務三表(貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書)が含まれる。
有価証券報告書は分量が多く、初見だと圧倒される。しかし、卒論で必要な財務三表は決まった位置に載っている。「第5 経理の状況」というセクションを開けば、必要な財務データにたどり着ける。慣れれば、10分程度で目的のデータを取り出せる。
企業IRサイト
各企業の公式サイトのIR(Investor Relations)ページから、決算短信・アニュアルレポートなどの資料を入手できる。
有価証券報告書より、視覚的で分かりやすい資料が揃うことが多い。数値の把握には有価証券報告書、経営戦略の理解にはIR資料、という使い分けが有効である。
特に「決算説明会資料」や「中期経営計画」は、企業自身の戦略認識が反映されており、財務指標の背景を理解する手がかりとなる。数値の背後にある「なぜ」を読み解くために、必ず参照したい資料である。
業界データベース
『会社四季報』『日経業界地図』などの業界データベースは、業界全体の動向や比較データを得るのに有用である。
大学図書館で無料閲覧できるケースが多い。個別企業の分析だけでなく、業界内の位置づけを把握するために活用したい。
『会社四季報』の最新版と数年前の版を比較することで、業界内の順位変動も確認できる。業界の構造変化を捉える上で、この時系列比較が有効となる。
4カテゴリの主要指標
結論:財務分析の指標は「収益性」「安全性」「効率性」「成長性」の4カテゴリに集約される。各カテゴリから2〜3個の代表指標を選び、体系的に分析することで、企業の全体像を把握できる。
指標は多数あるが、卒論では絞り込むことが重要である。4カテゴリの代表指標を整理する。
収益性:どれだけ利益を稼いでいるか
代表指標は「売上高営業利益率」「ROA(総資産利益率)」「ROE(自己資本利益率)」の3つである。企業の稼ぐ力を測る指標群となる。
売上高営業利益率=営業利益÷売上高。ROA=当期純利益÷総資産。ROE=当期純利益÷自己資本。この3つで、稼ぎ方の効率が多角的に見える。
収益性の分析は、企業の「稼ぐ体力」を測る作業である。売上高営業利益率は本業の効率、ROAは経営資源全体の効率、ROEは株主から見た効率を示す。3つの指標を並べて分析することで、収益構造の全体像が見えてくる。
安全性:倒産リスクの高さ
代表指標は「流動比率」「自己資本比率」「有利子負債依存度」の3つである。企業の財務的な安定性を測る。
流動比率=流動資産÷流動負債(短期的支払能力)。自己資本比率=自己資本÷総資産(長期的安定性)。有利子負債依存度=有利子負債÷総資産(借入依存度)。この3つで、財務の健全性が見える。
流動比率の目安は200%以上、自己資本比率の目安は40%以上とされる。ただし、業界により標準水準は異なる。金融業や不動産業のように、借入を前提とする業界では、これらの基準は当てはまらない。
効率性:資産をどれだけ有効活用しているか
代表指標は「総資産回転率」「棚卸資産回転率」「売上債権回転率」の3つである。資産の使い方の巧拙を測る。
総資産回転率=売上高÷総資産(全体の効率)。棚卸資産回転率(在庫の効率)、売上債権回転率(債権回収の効率)といった観点で、資産活用の巧拙が見える。
効率性指標は、業界特性を強く反映する。製造業は在庫回転率が低くなりがち、小売業は高くなる傾向がある。単純な高低比較ではなく、業界内での位置づけを意識した評価が必要である。
成長性:業績の伸びの勢い
代表指標は「売上高成長率」「営業利益成長率」「総資産成長率」の3つである。企業の成長スピードを測る。
各指標について、過去3〜5年の年平均成長率(CAGR)を計算する。成長軌道にあるか、停滞しているか、衰退しているかが定量的に見える。
CAGR(年平均成長率)の計算式は「(最終年÷初年)の(1÷年数)乗 − 1」である。Excelなら「=POWER(最終年÷初年, 1/年数)-1」で計算できる。単純平均より、成長スピードを正確に捉えられる。
比較分析の設計
結論:比較分析は「時系列比較(過去との比較)」と「同業他社比較(横との比較)」を組み合わせる。この2軸で、企業の変化と業界内の位置づけの両方が把握できる。
単年度・単社の分析では、意味のある結論が出にくい。比較の設計が、分析の価値を決める。
時系列比較
過去3〜5年の推移を分析することで、企業の変化を捉える。単年度の数値では見えない傾向が浮かび上がる。
「収益性は改善傾向」「安全性は悪化傾向」といったストーリーが、時系列で見えてくる。折れ線グラフで視覚化すると、読者にも伝わりやすい。
時系列で見る際は、コロナ禍・リーマンショック等の外部要因も踏まえて解釈したい。「なぜこの年に大きく落ちたか」「なぜこの年に急伸したか」の背景を理解することで、単なる数値の推移から意味あるストーリーが引き出せる。
同業他社比較
同じ業界の複数企業と比較することで、対象企業の業界内での位置づけが分かる。単独の分析より、比較分析の方が説得力を持つ。
比較対象は3〜5社が適切である。少なすぎると偏った比較になり、多すぎると分析が浅くなる。業界の主要プレーヤーを選ぶ姿勢が有効である。
比較対象の選定基準は「同じ業界」「規模が近い」「事業構造が類似」の3つである。業界大手を分析する時に、業界最小企業を比較対象にしても意味が薄い。規模帯を揃えた比較が、意味あるインサイトを生む。
2軸の組み合わせ
時系列と同業他社比較を組み合わせることで、「業界全体の傾向の中で、対象企業がどう位置づけられるか」が見える。
「業界全体は低迷しているが、A社だけ成長している」といったストーリーが、この組み合わせで初めて描ける。卒論の分析としては、この2軸を必ず組み合わせたい。
2軸を組み合わせる際は、「時系列軸」と「同業他社軸」を1枚のグラフに集約する方法も有効である。年度を横軸、指標値を縦軸に取り、対象企業と競合他社の複数線を並べて表示すると、変化と位置づけが1目で分かる。
分析結果の卒論本文への組み込み方
結論:分析結果は「概要提示→数値表・グラフ→解釈→結論」の4段階で本文に組み込む。この構造が、財務分析を含む卒論の標準的な書き方となる。
分析結果の見せ方が、卒論の説得力を決める。4段階の構造を整理する。
段階1:概要提示
「本節では〇〇について分析する」と、その節で扱う内容を予告する。読者が読みやすくなる。
いきなり数値表から始めると、読者は「何を見せられているのか」で混乱する。予告により、以降の内容を理解する土台が作られる。
段階2:数値表・グラフの提示
分析結果を、数値表とグラフで視覚的に提示する。表とグラフには必ずタイトルと出典を明記する。
時系列は折れ線グラフ、同業他社比較は棒グラフが有効である。データの性質に応じて、最適なグラフを選ぶ。詳細は卒論のデータ活用もあわせて参照してほしい。
段階3:解釈
数値の背後にある意味を、論理的に解釈する。「なぜこの数値になったか」を業界動向や戦略の視点から説明する。
単に数値を並べるだけでは、レポートに留まる。数値から意味を引き出す解釈こそが、卒論の学術的価値を生む。
解釈のコツは、「業界動向」「企業戦略」「経営環境」の3視点で数値を捉えることである。「なぜA社の営業利益率が業界平均を上回るのか」を、この3視点から説明できれば、深い分析となる。
段階4:結論
その節での結論を、簡潔に述べる。「以上の分析から、A社は〇〇であることが分かる」といった総括で締める。
結論を明確に書くことで、次節への流れが作られる。詳細は卒論の章別構成もあわせて参照してほしい。
よくある財務分析の失敗パターン
結論:よくある失敗は「指標の羅列」「比較なしの分析」「解釈の欠如」「業界特性の無視」「計算ミス」の5つである。事前に把握することで、回避できる。
典型的な失敗を知ることで、自分の分析を客観的にチェックできる。
失敗1:指標の羅列
10個以上の指標を並べて満足するNGパターン。指標の数ではなく、分析の深さが評価される。
4カテゴリから2〜3個ずつ、計8〜12個程度の指標に絞る。それぞれの指標について丁寧な解釈を加える方が、羅列より価値が高い。
失敗2:比較なしの分析
単年度・単社の数値だけを見て「〇〇が高い」「△△が低い」と結論づけるNGパターン。
「高い/低い」の基準は、比較対象があって初めて意味を持つ。時系列比較と同業他社比較を必ず組み合わせる姿勢が重要である。
比較なしの数値は、単なる情報の羅列に過ぎない。「営業利益率5%」だけでは、それが良いのか悪いのか判断できない。「業界平均3%に対して5%」「過去5年で3%から5%に上昇」といった比較文脈があって初めて、数値に意味が宿る。
失敗3:解釈の欠如
数値と表だけで、なぜその結果になったかの解釈が欠けているNGパターン。
「収益性が高い」で終わらせず「なぜ高いのか」を業界動向・企業戦略・経営環境から解釈する。この解釈が、卒論の中核となる。
失敗4:業界特性の無視
業界特性を考慮せず、指標の高低を単純に評価するNGパターン。
製造業の在庫回転率とサービス業の在庫回転率を単純比較しても意味がない。業界ごとの「標準的な水準」を踏まえた評価が求められる。
業界特性を理解するには、その業界の主要企業3〜5社の平均値を計算し、それを基準にする方法が有効である。「業界平均比+20%」「業界平均比-10%」といった相対評価により、業界特性を織り込んだ評価ができる。
失敗5:計算ミス
単純な計算ミスで、結論が誤った方向に進むNGパターン。指標計算後、必ず複数回チェックしたい。
Excelでの計算では、参照セルの間違いが発生しやすい。分数の分母・分子の取り違いも要注意である。同業他社と比べて明らかに異常な数値が出た場合、まず計算を疑いたい。
計算チェックの最良の方法は、既存の資料(会社四季報や決算短信)で計算済みの指標と自分の計算値を照合することである。「営業利益率」など、公表されている指標と自分の計算が一致すれば、計算プロセスの正確性が確認できる。
分析ツールとエクセルの使い方
結論:財務分析はExcelで十分実施できる。有価証券報告書の数値を入力し、比率を計算し、グラフを作成する、という一連の作業がExcelで完結する。
専用ソフトは不要である。Excelの基本機能で、卒論レベルの財務分析は十分にできる。
Excelでの分析シートの作り方
「年度×指標」のマトリクスで表を作る。過去5年、4カテゴリ×3指標=12指標なら、5行×12列のマトリクスとなる。
このマトリクスがあれば、時系列の推移が一目で分かる。同業他社比較用には、企業別に同じマトリクスを作成する。
マトリクスの上に、企業名・分析期間・データ出典を明記しておく。後から見返した時、または卒論本文で参照する時に、この情報が役立つ。丁寧なシート整理が、後の作業効率を上げる。
計算式の入力
指標の計算式を、セルの参照で入力する。手入力せず、参照式にすることで、データ変更時の再計算が容易になる。
例:営業利益率=B5/A5(B5に営業利益、A5に売上高)。参照式にしておけば、A5やB5の値を変更するだけで自動再計算される。
絶対参照($マーク)と相対参照を使い分けると、複数年・複数企業への計算式の一括適用が容易になる。ExcelのフィルコピーとF4キーの絶対参照切り替えを覚えるだけで、作業効率が大きく上がる。
グラフの作成
Excelの「挿入→グラフ」で、時系列は折れ線、比較は棒グラフを作成する。卒論本文にコピーして貼り付けられる。
グラフのタイトルと軸ラベルを必ず設定する。無題のグラフは、読者にとって理解が困難である。
凡例(どの線・棒がどの企業か)も明確に表示する。また、単位(%・億円・倍数など)を軸ラベルに含めることで、数値の読み取りが容易になる。細かな配慮の積み重ねが、卒論のグラフ品質を高める。
卒論の財務分析に関するよくある質問(FAQ)
財務分析について、よく寄せられる質問を7つに整理した。
Q1. 何社を分析対象にすべきですか?
1社を深掘り、または3〜5社を比較するのが標準である。多すぎると分析が浅くなり、少なすぎると比較の意味が薄れる。
「1社を深く」なら時系列分析を中心に、「複数社比較」なら同業他社比較を中心に構成する。自分のテーマに応じて選びたい。
初めての財務分析なら、1社の深掘りから始めることが推奨される。複数社比較は分析工数が3〜5倍になるため、時間管理に自信がない場合はリスクが高い。
Q2. 何年分のデータが必要ですか?
過去5年分が標準である。3年では傾向が見えにくく、10年では古すぎるデータが混じる。
5年分あれば、コロナ禍のような大きな環境変化も含めた分析ができる。中期的な傾向を捉えるのに適した期間である。
ただし、7〜10年の長期分析が必要な場合もある。企業の大きな戦略転換やM&Aを扱うテーマでは、その前後を含む長期データが不可欠となる。テーマに応じて、期間を判断したい。
Q3. 非上場企業は分析できますか?
財務データが公開されていないため、外部からの詳細な分析は困難である。上場企業を対象にする方が現実的である。
官報公告の決算公告や、業界団体の統計データから、限定的な分析は可能である。ただし、深掘りは難しい。
Q4. ROAとROEはどう違いますか?
ROAは総資産を分母、ROEは自己資本を分母とする。ROAは全体の効率、ROEは株主資本の効率を測る指標である。
両者を併用することで、企業の稼ぐ力を多角的に評価できる。ROEが高くROAが低い企業は、借入依存度が高い可能性がある。
「デュポン分析」という手法を使うと、ROEを「売上高利益率×総資産回転率×財務レバレッジ」の3要素に分解できる。この分解により、ROEが高い企業の内訳(利益率が高い/回転率が高い/借入が多い)が見えてくる。より深い分析が可能となる。
Q5. 業界平均はどこで入手できますか?
『会社四季報』の業界別ランキング、業界団体の公開資料、日経業界地図などで入手できる。
大学図書館で無料閲覧できるものが多い。業界平均との比較で、対象企業の位置づけがより明確になる。
Q6. 財務分析だけで卒論として成立しますか?
単なる分析の羅列では不十分。分析結果から何が言えるかの考察が必要である。
「A社の財務状況を分析した」だけでは卒論にならない。「A社の財務状況の背後にある戦略」「業界動向との関連」といった考察を加えることで、卒論として成立する。
財務分析を「材料」として、その先に「主張」「仮説の検証」「戦略の評価」を置くことで、卒論全体が学術論文として成立する。財務分析そのものは、卒論のクライマックスではなく、より大きな議論のための素材である。
Q7. 会計知識が浅くても大丈夫ですか?
基本的な財務諸表の読み方は、簿記3級レベルの知識で十分である。指標の計算式を理解できれば、分析は可能である。
不安があれば、簿記の入門書を1冊読む程度で、卒論用の財務分析には対応できる。指導教員にも相談したい。詳細は卒論を教授に相談する5タイミングを参照してほしい。
会計知識に不安がある場合、まず「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」の3表の構造を理解することから始めたい。YouTubeにも入門動画が豊富にあり、数時間で基本的な読み方を身につけられる。
まとめ|4カテゴリの指標と比較の2軸で、説得力ある分析を
卒論の財務分析は、対象企業の選定・データ入手・指標選択・比較設計・本文への組み込みの5段階で進めることが基本である。4カテゴリの指標(収益性・安全性・効率性・成長性)を体系的に扱い、時系列と同業他社比較を組み合わせることで、説得力のある分析が構築できる。
本記事で提示した対象選定の3視点、データ入手先、4カテゴリの指標、比較分析の設計、本文への組み込み、失敗パターンを踏まえれば、質の高い卒論財務分析が実施できる。
- 財務分析は客観的な根拠を提供し、卒論の説得力を担保する
- 対象企業選びの3視点は「データ入手可能性・比較容易性・研究意義」
- データはEDINET・企業IR・業界データベースの3ソースから入手する
- 指標は「収益性・安全性・効率性・成長性」の4カテゴリで整理する
- 各カテゴリから2〜3個ずつ、計8〜12個の指標を選ぶ
- 比較分析は「時系列(縦)」と「同業他社(横)」の2軸で設計する
- 本文への組み込みは「概要→数値表・グラフ→解釈→結論」の4段階
- よくある失敗は「羅列・比較なし・解釈欠如・業界無視・計算ミス」の5つ
より詳細な情報は、卒論のデータ活用、卒論の章別構成、卒論の調査、卒論を教授に相談する5タイミングもあわせて参照してほしい。
財務分析の設計や実施に不安が残る場合、参考資料としての外部活用も選択肢となる。レポートビズのような、卒論の参考資料作成を請け負う業者に相談してみるのも1つの道である。公式LINEから匿名で無料相談ができるので、まずは現状の相談から始めるのが安全な出発点となる。
ただし、外部の作成物をそのまま提出することは大学の学則違反となる。あくまで参考資料として活用し、最終的な卒論は自分の言葉と自分の考察で仕上げるという原則は守りたい。財務分析は、経営学系卒論の強力な武器である。適切な設計と丁寧な実施で、価値ある分析を構築していってほしい。
最後に伝えたいのは、「財務分析は時間がかかるが、その時間は必ず報われる」ということである。データを集め、指標を計算し、比較し、解釈する——各段階に相応の時間を投入することで、卒論全体の質が飛躍的に高まる。丁寧に、着実に、進めていってほしい。財務分析ができる人材は、卒業後の就活でも大きな強みとなる。この経験は、社会人になってからも活きる長期的な財産である。丁寧な取り組みが、その財産の価値を最大化する。応援している。良質な財務分析で、価値ある卒論を仕上げていってほしい。数字の力を、味方につけてほしい。財務分析は、必ず卒論の価値を高めてくれる。その事実を信じて、取り組んでいってほしい。応援している。
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