「卒論に注釈を入れたいが、脚注と文末注のどちらを使えばよいか」「注釈と引用の違いが曖昧で使い分けに迷う」「1本の卒論でどのくらい注釈をつければよいのか」——卒論執筆で注釈に関する悩みを抱える学生は多い。参考文献リストの書き方については学部の規定や大学図書館のガイドがあるが、注釈の使い方について体系的に整理した情報は意外に少なく、「本文で書くべきか注釈にすべきか」の判断で手が止まるケースが頻発する。
本記事では、累計6,000件超の卒業論文・レポート添削を手がけてきたレポートビズ編集部の視点から、注釈と引用の違い、注釈の目的別5分類、脚注・文末注・割注の3種比較、分野別スタイル、適正数と長さ、Word実務手順、NG5選、Before/After実例、参考文献リストとの関係、生成AI利用時の記載法までを体系的に整理する。この記事を読み終える頃には、注釈の使い分け判断が明確な基準で行えるようになる。
特に強調したいのは、注釈は「本文の可読性を保ちながら情報の厚みを確保する武器」であるという認識である。うまく使えば、本文はすっきりと論旨が通り、注釈で研究の緻密さや周辺情報の豊富さを示せる。逆に使い方を誤ると、本文の議論が読み取れないほど注釈が肥大化したり、逆に必要な出典明示が抜けたりして、卒論の完成度を下げる要因となる。単なる形式的なルールではなく、卒論の質を左右する要素として、注釈の運用を意識してほしい。
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卒論の注釈|結論と全体像
結論から述べる。卒論における注釈とは、「本文の流れを止めずに、補足的な情報・出典・専門用語の解説・別視点の提示・謝辞などを別枠で提供する仕組み」を指す。本文に書き込むと論旨の流れが乱れてしまう情報を、ページ下部(脚注)または論文末尾(文末注)に配置することで、本文の可読性を保ちながら情報の厚みも確保できる。
注釈の主な役割は5つある。①本文で扱いきれない補足説明、②引用や参考文献の出典明示、③専門用語の解説、④本文の主張と異なる別視点の提示、⑤研究協力者への謝辞的言及、である。この5つの目的を意識して使い分けると、注釈の付け方に迷わなくなる。
形式面では、脚注(ページ下部)・文末注(論文末尾)・割注(本文中の小字)の3種類がある。分野によって推奨形式が異なり、法学・歴史学は脚注中心、理系は文末注中心、心理学系は著者年方式で注釈を最小化するスタイルが標準となる。以下では、注釈と引用の違い、目的別5分類、3種の形式比較、分野別スタイル、実務手順を順に解説していく。
注釈と引用の違い|完全整理
まず整理しておきたいのが、注釈と引用の違いである。両者は密接に関連するため混同されやすいが、目的と機能は明確に異なる。
| 比較項目 | 引用 | 注釈 |
|---|---|---|
| 目的 | 他者の文章・データを自分の議論に取り込む | 本文を補足する情報を別枠で提供する |
| 配置 | 本文中(直接引用または間接引用) | ページ下部(脚注)または論文末尾(文末注) |
| 必須性 | 他者の文章を用いた場合は必須 | 任意(必要に応じて) |
| 形式 | 「」で括る、または字下げブロック | 本文に上付き番号、注釈欄に対応番号 |
| 内容 | 原則として原文のまま | 自分の補足説明が中心 |
| 典型例 | 「山田(2020)は〜と述べている」 | 「※1 詳細については山田(2020)を参照」 |
両者は排他的ではなく、多くの場合、併用される。「本文で引用→出典を注釈で明示」「本文で言及→補足を注釈で追加」といった具合に、引用の出典表示手段として注釈が使われることも多い。特に法学や歴史学では、注釈の中で引用と出典表示が一体化して機能する「引用注釈」のスタイルが標準である。両者の違いを理解したうえで、卒論の分野に合わせて使い分けることが重要である。
注釈の目的別|5分類
注釈をつける目的は、大きく5つに分類できる。この分類を頭に入れておくと、「これは注釈にすべきか本文にすべきか」の判断がスムーズになる。逆に、この分類のどれにも当てはまらない情報を注釈にしようとしている場合は、注釈にする必要がない情報(削除するか本文に統合する)である可能性が高い。
目的①|補足説明の追加
本文の議論に必須ではないが、読者の理解を深める補足情報を注釈にする。例えば「本研究では『主要都市』を政令指定都市に限定する」といった定義の補足、「なお、この分類は◯◯によるものである」といった背景説明などがこれに該当する。本文に入れると議論の流れが止まってしまう情報を、注釈で処理する。
目的②|出典の明示
引用や参照した文献の出典を注釈に記載する。「山田(2020, p.45)」「田中『日本経済史』岩波書店、2018年、120頁」のように書く。法学・歴史学で最も多用される注釈のパターンで、参考文献リストと重複する情報を含む場合もある。
目的③|専門用語の解説
本文中で使う専門用語のうち、読者にとって不明瞭な可能性がある語について定義や解説を注釈で提供する。「※本稿における『内在的批判』とは、対象自身の内部論理から問題点を析出する分析手法を指す」のように書く。本文で毎回定義を書くと冗長になるが、注釈にすれば流れを保てる。
目的④|別視点・反論の提示
本文の主張と異なる別の視点や、想定される反論に対する言及を注釈で行う。「なお、この見解に対しては〇〇(2019)からの批判があるが、本稿ではその論点には立ち入らない」のように書く。本文で扱うと議論が拡散するが、注釈で言及することで研究の視野の広さを示せる。
目的⑤|謝辞的言及
研究協力者、助言をくれた教員、データ提供元などへの謝辞や、研究倫理上の言及を注釈で行う。「本研究のインタビュー調査にご協力いただいた〇〇氏に感謝する」「本研究は◯◯大学倫理委員会の承認(承認番号◯◯)を得て実施した」などが該当する。
脚注・文末注・割注|3種の形式比較
注釈の物理的な配置形式には、脚注・文末注・割注の3種類がある。それぞれの特性と用途を整理する。
| 形式 | 配置 | メリット | デメリット | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 脚注 | 各ページ下部 | 参照しやすい、本文との対応が明確 | 本文組版が複雑になる | 法学、歴史学、文学 |
| 文末注 | 論文末尾 | 本文組版がシンプル、まとめて読める | 参照時にページを行き来する | 理系、心理学、工学 |
| 割注 | 本文中の小字 | その場で即座に読める | 本文の可読性が下がる | 短い補足、伝統的な人文学 |
脚注は、注釈対象と注釈内容が同じページ内に表示されるため、読者が本文と注釈を素早く行き来できる。反面、ページ組版が複雑になり、脚注が多いと本文が圧迫される。文末注は、本文組版がシンプルで印刷レイアウトが整いやすい反面、注釈を確認するために論文末尾までジャンプする必要がある。割注は本文中に(小字で)埋め込む形式で、短い補足には便利だが、多用すると本文の可読性を損なう。
卒論で最も一般的なのは脚注である。読み手(教員・副査)にとって最も参照しやすく、Wordの標準機能で簡単に挿入できる。文末注は理系分野やページ数の多い論文で採用される。割注は現代の卒論ではほぼ使われないが、伝統的な人文学(古典文学、東洋史学など)では今も残る形式である。
形式選択の判断基準として、「読み手が本文と注釈をどのくらいの頻度で行き来するか」を考えるとよい。頻繁に行き来する分野(法学、歴史学)では脚注が有利であり、注釈自体は補助的で読み手が最後にまとめて読めばよい分野(理系、心理学)では文末注が合理的である。指導教員から特に指示がない場合は、脚注を選んでおくのが無難な判断と言える。
分野別スタイル|注釈文化の違い
注釈の使い方には、分野ごとに大きく異なる文化がある。自分の分野の慣行を把握しておくと、指導教員から「注釈の使い方が分野の標準と違う」と指摘されずに済む。
法学|脚注中心、出典明示が緻密
法学の卒論では、脚注を大量に使用する。判例、法令、学説、先行研究など、すべての出典を脚注で明示する慣行があり、1ページに10個以上の脚注が並ぶことも珍しくない。参考文献リストと脚注の情報は重複することが多いが、これは法学の伝統的なスタイルであり、緻密な出典明示が要求される分野性を反映している。
歴史学・文学|脚注中心、補足説明も豊富
歴史学・文学系では、脚注を出典明示と補足説明の両方に活用する。「史料の背景説明」「異なる解釈の紹介」「関連する先行研究への言及」など、注釈が本文と並行する副読物のような役割を担うこともある。文体としても丁寧で、注釈自体が読み応えのある文章になっているケースが多い。
理系(工学・情報・物理・化学)|文末注中心、最小限
理系分野では、注釈の使用は最小限に抑え、必要な情報は本文中に組み込むのが標準である。参考文献はバンクーバー方式(番号引用)で本文中に「[1]」「[2]」と示し、詳細は論文末尾の参考文献リストで提供する。補足説明が必要な場合のみ、文末注または脚注を使う。1論文で注釈は5〜10個程度に収まることが多い。
心理学・社会科学|著者年方式で注釈を最小化
心理学・社会科学系ではAPAスタイルなどの著者年方式が主流で、本文中に「(山田, 2020)」と直接記載するため、出典明示のための脚注は不要である。補足説明や特記事項のみに脚注を限定するため、注釈の総数は少ない(1論文で10個以下が一般的)。
注釈の適正数と長さ
卒論全体で注釈をいくつ付ければよいのか、1つの注釈をどの程度の長さにすべきかは、多くの学生が悩むポイントである。分野別に整理する。
分野別の適正数(卒論全体)|法学80〜200個、歴史学・文学50〜150個、理系5〜30個、心理学・社会科学10〜40個が目安である。ただしこれはあくまで目安であり、少ないから悪い、多いから良いというものではない。研究内容と論述スタイルによって最適値は変わる。
1つの注釈の長さ|出典明示のみの注釈は1行(30〜60字)、補足説明を含む注釈は2〜5行(60〜300字)が標準的である。それを超える長さの注釈は「本文で書くべき内容」の可能性が高い。長すぎる注釈は読み手の負担を増やし、本末転倒となる。
また、「注釈だらけで本文が読めない」状態も避けたい。特に法学以外の分野では、1ページに5個以上の脚注が並ぶと視覚的に圧迫感が強くなる。目安として、1ページあたりの脚注は3〜5個以内、脚注全体で本文の3割以内に収めるのが読みやすい構成である。
逆に「注釈を出し惜しみして必要な出典明示を怠る」ケースも見受けられる。特に文系分野で先行研究への言及が多い場合、出典を注釈で明示せずに「〇〇によれば」とだけ書いていると、剽窃と疑われるリスクが高まる。注釈は「必要な場面では出し惜しみせず、不要な場面では控える」というメリハリのある運用が理想である。判断に迷ったら「読み手が原典に当たれる情報を提供できているか」を基準に考えるとよい。
Word実務手順|注釈の挿入と管理
Wordで注釈を挿入する実務手順を紹介する。手動で番号を管理するのは事故のもとなので、必ずWordの標準機能を使う。
手順1|脚注の挿入(Ctrl+Alt+F)
注釈をつけたい箇所にカーソルを置き、「Ctrl+Alt+F」を押すと自動的に脚注が挿入される。本文には上付き番号が、ページ下部には対応する注釈欄が表示される。「参考資料」タブ→「脚注の挿入」からも同じ操作ができる。
手順2|文末注の挿入(Ctrl+Alt+D)
文末注を挿入したい場合は「Ctrl+Alt+D」を押す。論文末尾に注釈欄が作成され、本文にも上付き番号が挿入される。脚注と文末注は混在させず、卒論全体でどちらかに統一するのが原則である。
手順3|番号形式の変更
「参考資料」タブ→「脚注」グループの右下矢印から「脚注と文末脚注」ダイアログを開くと、番号形式(1,2,3 / i,ii,iii / a,b,c / *,†,‡など)を変更できる。分野の慣例に合わせて選ぶ。
手順4|注釈の並び替え・削除・追加
Wordの脚注機能は自動採番であり、途中に注釈を追加・削除しても番号は自動で振り直される。本文の上付き番号を削除すると対応する注釈も削除されるため、注釈だけを削除するときは本文の番号を消せばよい。
手順5|区切り線・書式の調整
脚注と本文の間には自動で区切り線が引かれる。「表示」タブ→「下書き」表示に切り替え、「参考資料」タブ→「注の表示」→「脚注の区切り線」で区切り線を変更・削除できる。フォントサイズは本文より1〜2ポイント小さく(9〜10pt)するのが標準である。
Wordの脚注機能を使うメリットは、番号の自動管理だけでなく、Wordの目次生成や相互参照機能とも連携できる点にある。例えば「詳細は脚注3を参照」といった記載を本文中で行う場合、「参考資料」タブ→「相互参照」から脚注番号を挿入すれば、後で番号が変わっても自動で追従する。手動で「脚注3」と書いておくと、注釈の追加削除で番号ズレが発生する。長い卒論では、このような自動化の恩恵が非常に大きい。手動管理に比べて、提出直前の番号チェックの負担が劇的に減る。
注釈NG|5選
教員が卒論を添削する際、注釈に関して頻繁に指摘される代表的なNGパターンを5つ挙げる。
NG①|過剰な注釈
ページの半分以上が脚注で埋まるほど注釈を付けるパターン。本文の可読性が著しく下がり、逆に議論の焦点が見えにくくなる。分野の適正数を意識し、必要最小限に絞る。
NG②|本文で言うべき内容の注釈化
議論の中核をなす主張や重要な根拠を注釈に押し込むパターン。読み手は本文だけで論旨を追えなくなり、注釈を読まないと論文が理解できない構造になる。中核的な内容は本文で扱う。
NG③|出典なしの引用注釈
「〇〇によれば」と注釈で書きながら、著者名・書名・ページ数などの出典情報が不十分なパターン。読み手が原典に当たれない注釈は機能を果たさない。書誌情報は完全な形で記載する。
NG④|本文と注釈の番号ズレ
手動で番号を振っている場合、途中に注釈を追加・削除すると番号がズレる。Wordの脚注機能を使えば自動採番で解決するため、必ず標準機能を使うこと。手動採番は事故のもとである。
NG⑤|注釈の長さの不統一・過長
1つの注釈が1ページ分に及ぶような過長パターン。注釈で議論を展開してしまい、本文と対等な分量になるのは本末転倒である。長い議論が必要なら本文の一節として扱うのが正しい。
これら5つのNGは、いずれも執筆中に気づきにくい。提出前に「注釈をすべて非表示にした状態で本文だけを通読する」チェックを行うと、本文が独立して読めるかを確認できる。もし本文だけでは論旨が追えない場合、それは注釈に本文的内容が混入しているサインである。逆に注釈だけを通読すると、注釈全体の分量と質のバランスも確認できる。この2つの通読チェックは、それぞれ30分〜1時間程度で終わる作業だが、卒論の完成度を大きく引き上げる効果がある。
Before/After実例|5選
実際の卒論でよく見られる注釈のBefore/After例を5つ紹介する。自分の卒論と照らし合わせ、同様の傾向がないか確認してほしい。
実例①|過剰注釈の整理
Before(1ページに脚注8個、本文の半分が脚注)
After(脚注3個に整理、補足情報の一部を本文に統合、または削除)
実例②|中核内容の本文化
Before「主要な結論は、〇〇である(脚注:この結論の根拠は〜、詳細は〜)」
After「主要な結論は、〇〇である。この結論の根拠は〜(本文で詳細を展開)」
実例③|出典情報の完成
Before「※1 山田による」
After「※1 山田太郎『日本経済史論』岩波書店、2020年、120-125頁。」
実例④|Word自動採番への移行
Before(手動で本文に「※1」「※2」を書き込み、番号ズレが多発)
After(Wordの脚注機能で自動採番、追加削除にも対応)
実例⑤|過長注釈の分割
Before(1つの注釈で3段落500字の議論)
After(1〜2文の簡潔な言及にとどめ、詳細議論は本文の別セクションに移動)
参考文献リストとの関係
注釈と参考文献リストは、卒論において密接に関連する2つの要素である。両者の関係を整理しておくと、卒論全体の構成が明確になる。
脚注中心の分野(法学・歴史学)では、脚注で出典を明示し、末尾の参考文献リストで書誌情報を再掲する。脚注では簡略形式(著者名+年+ページ数)で書き、参考文献リストで完全形式(著者名+書名+出版社+年+ページ範囲)を書くのが慣例である。バンクーバー方式の分野(理系)では、本文中に「[1]」と番号を示し、参考文献リストで詳細を書く。著者年方式の分野(心理学・社会科学)では、本文中に「(山田, 2020)」と直接記載し、参考文献リストでアルファベット順または五十音順に書誌情報を並べる。
いずれの方式でも、参考文献リストと本文中の記載(または脚注)の対応関係が完全に一致していることが必須である。本文で引用した文献が参考文献リストにない、あるいは参考文献リストにあるが本文で引用されていない、といった不整合は減点対象となる。提出前に必ず対応チェックを行うこと。
対応チェックの実務的な方法として、参考文献リストを紙に印刷し、本文を読みながら1つずつ引用箇所を確認してチェックマークを付けていく方法が確実である。Wordの検索機能で著者名を検索する方法もあるが、共著文献や海外文献の綴りズレなどを見逃す可能性がある。時間はかかるが、紙でのチェックが最も精度が高い。特に卒論の参考文献が30本を超える場合は、このチェックを必ず実施したい。参考文献リストは卒論の学術的信頼性を示す重要な要素であり、ここでの不整合は「詰めが甘い」印象を強く与える。
生成AI利用時の注釈記載法
ChatGPT、Claude、Geminiなどの生成AIを卒論執筆で活用する場合、その利用について注釈または謝辞的な記載を求める大学が増えている。適切な記載法を整理する。
記載する場所|「はじめに」の脚注または「謝辞」欄、あるいは論文末尾の付記に記載する。学部の卒論規定で場所が指定されている場合はそれに従う。
記載する内容|使用したAIの名称・バージョン、利用範囲(構想段階/文章校正/翻訳補助など)、利用日付を明記する。例えば「本論文の一部の英文要約作成にあたり、ChatGPT(GPT-4、2024年11月時点)を翻訳補助として使用した」といった具合である。
記載してはいけないこと|「AIが書いた文章」を注釈なしに使うのは剽窃と同等に扱われる可能性がある。AI利用を隠すことは学術倫理違反となるため、必ず開示する。ただしAIをアイデア発想や下調べに使った場合の開示範囲は大学ごとに規定が異なるため、卒論規定を必ず確認する。
生成AIの引用フォーマットは、まだ学術界で標準化されていない。当面は「著者(AI提供元)、AI名、バージョン、利用日」を明示するのが安全である。この点は今後数年で標準化が進むと予想されるため、学会や指導教員の最新の指針を常に確認しておく必要がある。
実務的なコツとして、AI利用を注釈に記載する際は「どの範囲で使ったか」を具体的に書くことが重要である。「AIをアイデア発想の壁打ちに使用した」「英文要約のブラッシュアップに使用した」「文法チェックとして使用した」など、利用範囲を明確化することで、剽窃と誤解されるリスクを減らせる。逆に「AIを執筆全般に使用」のような曖昧な記載は、範囲不明のため疑念を招く可能性がある。透明性を重視した記載を心がけたい。
それでも判断に迷う場合の選択肢
ここまで体系的なルールを紹介してきたが、実際の執筆では判断に迷う場面が必ず出てくる。その場合の選択肢を3つ提示する。
①指導教員の過去論文を参照|指導教員の学会論文や単著を1〜2本読み、注釈の使い方を模倣する。研究室の伝統的なスタイルに合わせられる。
②分野の主要な学会誌を参照|自分の分野の主要学会誌の投稿規定と、掲載論文の注釈スタイルを確認する。学術界で承認されたスタイルを取り入れることで、卒論から修論・学会発表への橋渡しがスムーズになる。
③第三者の添削を活用|自分では気づけない注釈の使い方の問題を、第三者の視点で指摘してもらう。レポートビズでは、累計6,000件超の指導実績をもとに、参考資料としての卒論の注釈構造チェックを提供している。公式LINEには1,700名超が登録しており、24時間相談を受け付けている。
よくある質問|FAQ
Q1|脚注と文末注を混在させてもよいですか
原則として混在させない。卒論全体でどちらか一方に統一する。混在すると読み手が「どこに注釈があるか」を都度判断する必要があり、負担が増える。分野の慣行に従って選ぶ。
Q2|注釈が全くない卒論は問題ですか
理系や心理学系では注釈が少ないのは自然だが、法学・歴史学・文学で注釈がゼロなのは不自然である。分野の慣行に応じた最低限の注釈は必要であり、指導教員に確認するとよい。
Q3|参考文献リストがあれば脚注は不要ですか
分野による。理系や心理学系では本文中の番号引用または著者年引用で足りるため、脚注は最小限で済む。法学・歴史学では、参考文献リストとは別に脚注で出典明示する慣行が強く、両者は補完関係にある。
Q4|注釈のフォントサイズは本文と同じですか
注釈は本文より1〜2ポイント小さくするのが標準である。本文が10.5ptなら注釈は9pt、本文が12ptなら注釈は10ptといった具合である。Wordのデフォルト設定でも自動的にやや小さいサイズが適用される。
Q5|注釈で自分の意見を書いてもよいですか
本文の議論の補足として自分の意見を書くのは問題ない。ただし、本文の主張と矛盾する意見や、独立した議論を注釈で展開するのは避ける。中核的な主張は本文に、補足的な意見は注釈に、と使い分ける。
Q6|同じ文献を複数回参照するときの注釈はどう書きますか
初出では完全な書誌情報、2回目以降は略記(「山田、前掲書、p.50」「Yamada, op. cit., p.50」など)で書くのが伝統的な慣例である。ただし近年は毎回完全書誌情報を書く方式も許容される。指導教員の指示に従う。
Q7|Webサイトの出典を注釈で書く方法は
「著者名(または運営者)『ページタイトル』ウェブサイト名、URL、閲覧日」の形式で書く。閲覧日は必須である。例:「厚生労働省『令和5年版労働経済白書』厚生労働省ウェブサイト、https://〜、2024年10月15日閲覧」。
まとめ|注釈は本文を補強する武器である
本記事では、卒論の注釈について、引用との違い、目的別5分類、脚注・文末注・割注の3種比較、分野別スタイル、適正数と長さ、Word実務手順、NG5選、Before/After実例5選、参考文献リストとの関係、生成AI利用時の記載法、FAQまでを体系的に整理してきた。
注釈は本文の流れを止めずに情報の厚みを提供する強力な仕組みだが、使いすぎると本文の可読性を損ない、使わなさすぎると議論の裏付けが弱く見える。分野の慣行と目的別5分類を意識して、最適な量とスタイルで運用することが重要である。特に「本文で書くべきか注釈にすべきか」の判断基準を持っておくと、迷いなく執筆を進められる。
本記事のポイントを整理すると、以下の3点に集約される。第一に、注釈と引用は目的が異なる別概念だが、多くの場合併用される。第二に、注釈には目的別5分類(補足説明/出典明示/専門用語解説/別視点/謝辞)があり、この分類を意識すると使い分けがスムーズになる。第三に、注釈の形式(脚注/文末注/割注)と適正数は分野の慣行に従うのが基本である。この3点を押さえれば、注釈の運用で大きく道を外すことはない。
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最後に、本記事のチェックポイントを再確認する。注釈を書く前に「これは目的別5分類のどれか」を確認し、書いた後に「本文だけで論旨が通るか」を検証する。この2つの問いを習慣化するだけで、注釈の使い方が格段に洗練される。細部への注意力こそが卒論の完成度を決める——注釈もまた、その細部の一つとして丁寧に扱ってほしい。
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